offep1:料理当番制導入 sec-1
とある夕方。
研究室の共用スペースには、クリームシチューのいい匂いが広がっている。
Verisは今日の仕事の後始末を行いながらその香りに顔が緩んでおり、Solも携帯ゲームをしつつも上機嫌である。
Evaは相変わらずソファで寝ているが、寝ているときは大体幸せそうな顔をしている。Quanだけ相変わらず仏調面だが、こいつは常にそうである。
やがてキッチンからStellaが大鍋を持って食卓に戻ってくる。
Stella「ご飯できたよー」
Veris「ありがとうございます。ほらSol、配膳手伝ってください」
Sol「ごめんまだセーブポイント来てないからもーちょっとだけ」
Veris「関係ないです!Evaさんも早く起きてください」
Eva「あ~……だる…」
Quan「……」
4人がぞろぞろ集まる中、Stellaがシチューを注ぎながら唐突に切り出してきた。
Stella「ねえみんな、今日はちょっとお知らせがあるよぉ」
Eva「その言い方、ろくでもないやつだな……」
Sol「新しいおやつ制度とか?」
Quan「その期待値設定は非合理的」
Veris「まだ何も聞いてないんですから、先に否定しないでください……」
Stella「ふふーん。明日から、この研究室の夕飯は当番制にしまーす!」
Stellaが笑顔で言い放つ。空気が固まる。
Veris「えっ」
Sol「…………は?」
Eva「最悪」
Quan「却下」
Stella「反応が露骨すぎない!?」
Eva「いや、だって今まで普通にStellaが作ってるじゃん。それでよくない?」
Sol「私、食べる係なら得意なんだけどなぁ。ダメ?」
Quan「調理に時間を割く合理性が存在しない。栄養要件を満たすだけなら完全栄養食で十分だ」
Eva「お前だけだよそれを夕飯って呼ぶの……」
Veris「でも、まあ……当番制自体は、別におかしくはないと思います。Stellaさんの負荷の分散になります」
Stella「さっすがVeris。話が早いね」
Sol「相変わらずいいんちょは真面目だなぁ」
Veris「普通のことを言っただけですけど!?」
Eva「……そもそも、Stella以外料理できたっけ?」
Veris「私は多少は……Solは無理だとしてEvaさんQuanさんは未曽有なんですが」
Sol「失礼な!何回かやったことあるし!」
Eva「あー……医者時代は忙しくて考えたこともなかったな」
Quan「手順があれば実行可能だ。だが料理にリソースを割く合理性が低い、拒否する。」
Veris「やってください!」
会話を聞きながらStellaがけらけら笑う。
Stella「んー、なんかみんな割と行けそうな気がするねぇ」
Eva「いけるの定義が緩すぎるんだよ……」
Stella「そもそもね、毎日私が作るの、別に嫌じゃないけどさ。たまにはみんなの料理も食べてみたいの」
Sol「好奇心は猫を殺すってやつ?」
Veris「多分違いますよそれ……いや、私も少し怖いですけど」
Quan「統計的には事故率が上がることが予想できる」
Stella「ひど!」
Sol「でも、ちょっと面白そうだよな。誰が一番ヤバいか選手権」
Veris「そういう方向に持っていかないでください!」
Eva「Veris、メシの時くらいそうカリカリするな」
Veris「しますよ!献立どうするんですか、買い出しは、予算管理は、片付け分担は」
Stella「そこは当番の人におまかせ!」
Veris「雑!」
Quan「破綻の兆候が既に見える」
Stella「だいじょうぶだって! 失敗したら、みんなで笑って食べればいいんだから!」
Quan「『笑える失敗』の範疇で収まるのか?」
Eva「笑えない失敗が発生する前提で進めないでくれ……」
Sol「んで、誰からやるの?」
Stellaが悩むが、何も考えていない顔である。
Stella「うーん……やりたい人いる?」
Eva「決めてないんかい」
Sol「えー、じゃああたしやりたい!!」
Quan「却下」
Sol「お前に聞いてねえよ!」
Veris「……一番危険臭のする人がそう言いだしたら誰でも止めるでしょう」
Sol「だーかーら!!私はちょっとはできるんだって!!ねっいいでしょStella?」
Stellaはシチューを頬張りながら、またしても何も考えてない顔で言い放つ。
Stella「うーん、じゃあ明日はSolちゃんよろしく!」
Sol「やったーー!!!」
Veris「終わった……」
Quan「明日は出前にする」
Eva「マジで急に決まるな……あんた心の準備とかないの」
Sol「冷蔵庫の中身知らん!」
Eva「本当に何も考えてないのかよ!」
Veris「……せめてルール表くらいは作りましょう。買い出しの担当も、予算も、できれば禁止事項も決めたいです」
Sol「禁止事項?」
Veris「キッチンを爆破させない、食べられないものを作らない、研究室の予算を破産させない……」
Sol「私の事ナメすぎだろ!!!」
Quan「私にも一部刺さるかもしれない」
Veris「何を作ろうとしてたんですか!?」
Stellaは満面の笑みで両手を叩く。
Stella「というわけで決まり! 反対意見は却下、泣き言も却下、責任持って回していこー!」
Eva「今日までに遺書書いとくか……」
Quan「Veris、非常食の置き場所を教えてくれ」
Veris「ハナからやる気ないじゃないですか!」
Sol「まあまあ見てなって。私が絶品料理を作ってやるよ」
Stella「楽しみー!!」
Eva「全然楽しみじゃない……」