ep5:"七曜魔法研究" sec-5

Quanが静かに立ち上がる。 Stella「もうあんまり説明しなくても大丈夫?」 Quan「先程ので要領は把握できた。問題ない」 Quanが話を聞く前にせっせと魔法陣の前に歩んでいく。 Sol「Quanなら絶対なんかすごいの出そうだな」 Quan「方法は心得ているが、どうなるかは予想がつかない」 Eva「壊すなよここ」 Quan「保証はしない」 Stella「して!!」 Quanが淡々と月輪の魔石を手に取った。 その瞬間、実験室の空気が変わり黒い魔力が静かに広がった。 Veris「……えっ」 Sol「おおおおお!!」 Verisと似たような黒いオーラがQuanを包み込むが、魔力は暴発することなくQuanの周囲を均一に満たしていく。やがて本人の姿が見えなくなる。 ほどなくして、黒い魔力が一瞬でラットに向かいまたしてもラットは干からびていった。 Stella「……す、すごいよQuanちゃん!かなり強い反応が出てる!」 Sol「Verisのときも凄かったけど、なんかこっちは悪意あるな」 Veris「比較対象に私を出さないでください……」 続いて水輪。 Quanが魔石を握った瞬間、幾つもの水流が絡み合いながらまるで意思を持つようにQuanの周囲を循環し始めた。 Stella「す、水輪も!?」 Eva「……私より強くねえか?」 Quan「そうだな」 Eva「腹立つ」 Sol「すげー! Quan何でもできるじゃん!」 Quan「まだ途中だ」 木輪の魔石もQuanが握ると、魔法陣の周囲に植物が一気に生え始める。 Stella「えーすごいすごい! 月も水も木も全部できちゃってる!」 Veris「流石というか……何故こんなに……」 Quan「詠唱者の知能と魔力制御に一定の相関が見られるかもしれない」 Eva「自分で言うか」 最後に残った魔石は火輪。 Sol「最後に火か、絶対すごいやつじゃん!」 Stella「私も気になる!!」 Veris「ちょ、ここ火事にしないでくださいね……」 Eva「コイツだけ上手く行きすぎて腹立つ」 Quan「やる」 Quanは火輪の魔石を受け取り、右手を正面へ掲げた。 だが、数秒経っても何も起きない。 Stella「……?」 Veris「……あれ?火が出ませんね」 Eva「ふっ、唯一火はダメってか」 Sol「なんだよー、もっとこうボォッ!!!って凄いの出せよー!」 だが、Quanは答えないままボヤく外野には興味を示さず、ただ正面の一点を見続けている。 Sol「……Quan?」 Stella「……どうしたの?」 Quan「……」 暫く誰も動かなかった。そして。 "キィィィン……" 甲高い音が、実験棟に広がり始める。 Veris「……え?」 Eva「……何だ」 次の瞬間。 "ボシュ" 一瞬だけ強い音が鳴り、空気が震え上がったのち実験棟そのものが一瞬大きく揺れた。 そして、ラットは一瞬の間に灰燼と化していた。 Sol「…………え」 Stella「…………!?」 Veris「…………は?」 Eva「…………な」 誰も言葉を発さない中、Quanは掲げていた手をゆっくり下ろし、表情一つ変えず低い声で告げた。 Quan「……空気を一点に圧縮した」 Stella「……え?」 Quan「空気を極端に圧縮すれば局所的に温度が上昇する。結果として、火を発生させることなく対象を瞬間的に焼却した」 Eva「何だと……」 Stella「こ、こんな使い方してる人初めてかも……」 Sol「よくわかんねーけどスゴくね!?!?」 困惑する3人をよそに、Verisは消し炭となったラットを見ながら何とも言えない表情でQuanに告げる。 Veris「……地味ですね」 Sol「はぁ!?」 Veris「だって、何も見えなかったじゃないですか。音がした後気付いたら終わってるんですよ」 Sol「いやいやいや超カッコいいだろ!!」 Solが勢いよく詰め寄って来る、 Sol「何も見えないのに一瞬で消し炭だよ!? これこそゲームの最強技みたいなやつじゃん!!」 Veris「でも何が起こったのかよく分かりません……」 Sol「そこがいいんだよ!!!理屈屋らしくて超いいじゃん!」 Eva「まあ……見た目は置いといてやってることは一番頭おかしいな」 Quan「火炎をわざわざ発生させる必要はないと判断した。合理的な方法だ」 Stellaは目を輝かせながら、研究ノートへ結果を書き込んでいる。 Stella「すごい……ヴェリちゃんは月輪、Solちゃんは木輪、Evaは水輪、Quanちゃんは……全部かなり高いね!」 Eva「……じゃあQuan担当どうすんの?」 Quan「火が余ってるのなら火にする」 Veris「そんな適当な……」 Stella「あはは……でもこれなら丁度噛み合ってるし、上手く行きそうだね!みんなありがと!!研究室もどろっか~」 Sol「あー楽しかった!!……あっちょっと待てよ?」 解散ムードになり始める中、Solが唐突に思い出す。 Sol「そういえばさ、Stellaの金輪ってどんなの? 私たちのより先にマスターしてるんでしょ?」 Stella「あっ忘れてた!確かにさっき見せたのはちょっとだけだったからねぇ」 Eva「まあ、Stellaのことだからどうせ可愛い感じの魔法なんじゃないか?なんかこう、キラキラした金属がふわふわ浮くとか、花みたいな形になるとか」 Stella「うーん……さっきみたいに綺麗ではあるけど……」 Veris「どうせですし見せてくださいよ。さっきから惨い奴ばっかりで心が荒んでます」 Stella「えぇ~じゃあ、ちょっとだけ見せてあげるね」 Stellaが魔法陣の前へ歩いていき、ポケットから金輪の魔石を取り出した。 Stella「金輪は物理魔法だから、さっきの四つとはちょっと性質が違うかなぁ」 Quan「物質そのものを操作する系統か」 Stella「うん。私が研究して分かった範囲だと鉱物や金属みたいな無機物との相性がかなり強いみたい」 Eva「それが研究室で見せた奴だな」 Stella「それじゃあいくねぇ……金輪詠唱!」 Stellaがそう告げた直後、実験棟の天井から巨大な鉱物結晶が現れた。 Veris「な!?」 そしてそのまま落下する。 "ズドン!!" 轟音と共に、ラットが一瞬で押し潰され見るも無残な姿になった。 Veris「…………」 Eva「…………」 Quan「…………」 Sol「おおおおお!!」 Solだけが歓声を上げている。 Stella「えへへー、久々にやったけどまあこんな感じかな?」 Veris「こんな感じじゃありませんよ!!」 Stella「え?」 Veris「全然可愛くないじゃないですか!!形もやり方も!!」 Stella「えぇ!?」 Eva「……」 Evaは無言で崩れた結晶とラットだったものを見る。 Eva「……どこが可愛いんだよというのは概ね同意」 Stella「け、結晶が綺麗でかわいいし……」 Eva「そこだけじゃねえか」 Sol「すげーーー!!」 Solはすっかり興奮している。 Sol「メッチャカッコいいし綺麗だな!!もしかして地面からも出せる!?」 Stella「できるよ~えいっ」 Stellaが軽く地面へ手を向けると、床から無数の鉱物結晶が突き出してきた。 "ズガガガガガッ!!" Veris「うわっ!?」 Eva「おいおいおい」 床から生えた結晶は鋭く尖り、互いに絡み合いながら伸びていく。 その先にいた別のラットが、逃げる間もなく結晶に押し上げられてそのまま動かなくなった。 Sol「すっげーーー!!」 Stella「これが金輪かなぁ、綺麗だよね~」 Veris「…………」 Eva「…………」 VerisとEvaが顔を見合わせる。 Veris「Stellaさん」 Stella「なーに?」 Veris「これ、どう見ても凶器ですよね」 Stella「えぇ!?」 Eva「鉱物と言うより処刑器具だな」 Stella「でもでも!結晶の形すごく綺麗じゃない!?」 Eva「お前そこしか見てないだろ」 Stella「は、はい」 Eva「…………」 Quanは床から突き出した結晶を観察している。 Quan「生成速度が異常に速かったな。硬度も担保されている」 Stella「うん。金輪は物質の生成や変形との相性がいいみたいで、結構自由に形を変えられたりもするよ」 Eva「こいつ、研究の事になるとQuanに似るよな」 Veris「全くですね」 Stella「えぇ~……」 与太話がしばらく続いた後、五人は実験棟を片付け始める。 Stellaは最後まで床に残った鉱物結晶を眺めていた。 Stella「やっぱり綺麗だなぁ」 Eva「まだ言うか」 Veris「……Stellaさんの美的感覚だけは、少し理解できそうにありません」 Sol「私は分かるぜ!!」 Eva「お前は何でも面白ければいいだけだろ」 Sol「そうとも言う!」 Quan「否定しろ」 こうして七曜魔法の初めての本格的な適性調査は終了した。
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